夢か現か

 

はるか遠くの方で君の声が聞こえる

くりかえし僕を呼んでる

 

午睡 / ハンバートハンバート

https://www.youtube.com/watch?v=9Erz0ioEHjo

 

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昨夜、初めて会った女性の家に泊まった。

女性はわたしより歳上で、現在無職。

セピアの似合う懐かしくて優しいひと。

 

夜集合、朝解散。

話して、寝て、食べて、帰る。

不思議な時間だった。

 

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最寄駅をでて細道を歩き、線路沿いをずっとまっすぐ。女性は、猫を8匹飼っている家の目の前に住んでいる。

密集したアパートの中の細い階段をあがり、お洒落なアンティーク調のドアノブがついた白い扉を開ける。

 

郷愁

 

外観も、匂いも、女性そのものも、どこかで見たことあるようで、ないような、懐かしいけど遠い、パラレルワールドみたいな、そんなかんじだった。

 

たくさんのアロマキャンドルとお香、壁には抜いた自分の親知らずが額に入れられて飾ってあった。

 

わたしの部屋にそっくりな出窓。出窓にはたくさんのドライフラワーと、本と、ペン。

 

ドライフラワーの中にあったヒヤシンスの名前が出てこなくて、「ハクビシンみたいな名前のやつ」と思い出せずにいた。イントネーションは同じかも?

 

写真をあげた。全部かざってくれた。嬉しい。

 

少ししたらアイスを買いに行った。「うずまきみたいなアイス」が食べたかったらしい。ソフトクリームのことでした。

 

女性は少し疲れやすくて、帰り道の途中、いつもここに座っているんだという橋の真ん中でタバコを吸った。アメスピ

 

いろんな話をした。いろんな質問をしてくれた。関心を持ってくれるのは嬉しい。自分で前髪を切るのはやめて今度は美容院に行った方がいいですね、とか。木登りって得意だったっけ、とか。普段みる夢のはなしとか。思ったよりずっと話すことがたくさんあった。ふしぎ。

 

ふしぎといえば、部屋の構造がわたしの部屋とそっくりで、寝るとき自分の部屋にいるみたいだった。だからいつも通りすこし遅くまで寝れなかった。女性は床でミノムシみたいに布団にくるまって寝ていた。寝相が悪いそうで、たしかに時折ベットが揺れた。蹴っていた、ベットを。

 

わたしの部屋なのにわたしの部屋じゃなかった。もっとずっと綺麗で、こんな風がいいなって空間だった。

 

女性とわたしはすこし似ている。思いのままに、衝動的に、綺麗なところへ、穏やかなところへ、裸足で走っていく感じ。とおってきた道も少し似ていて、それでいて私の憧れる女性像だった。

 

わたしはベット、女性はその隣の床で寝ていた。その図をぼんやりみていて、「もう一人の自分」がいるような感覚がした。未来の自分、というよりも、私の姉というよりも、もう一人の自分。私がそこに寝ていた気がした。

 

夢か現か。

 

いつ寝たことだろうか、わからないけど、朝になったから部屋がよく見えた。本棚にたくさん入った小説たち。本を読むひとはかっこいいなってやっぱり思う。

 

起きたら朝食がでてきた。布団の上に小さな椅子みたいなお洒落なちゃぶ台を置いて、お洒落な朝ごはんを食べた。

 

豚の角煮の入ったパン、ベーコン、目玉焼き、アボカドとトマトのクリームとチーズもついてた。あと、豆苗。夢見ながら女性が料理している音を聞いてた気がする。

 

美味しくないものがあったらお構いなく残してくださいね、と言われた。もちろん全部食べた。美味しいからすごく早く食べ終わった。でもなんだかすごくゆっくり時間が流れてた。

 

気がする。

 

ふしぎ。ふしぎだな。相変わらず寝れなかったけど、久しぶりに夢を見なかった。ふしぎ。

 

いまは帰り道にいる。夢から現へもどっている。髪の毛にお香とバニラの匂いが 染みていて、心地いい。さっきからなんども嗅いでいる。夢の匂い。

 

そのあと女性は「いい匂いを置いて帰ってくれてありがとう」と言ってくれた。会った時からすごくいい匂いがする言ってくれた。はじめていわれた。こちらこのいい匂いをお土産にくれてありがとうです、だ。

 

眠くなる声ですね、と言われた。あと、声が高いと言ってくれた。うれしい。いつも低いと言われるから、嬉しい。

 

また行きたい。

 

寝れないあいだはいろんなことを考える。「夜迷言」だ。なんちゃって。でもわりと気に入った。

 

わたしは優しくなりたい。ほんとうの優しいひとになりたい。毒を吐いていい相手になりたい。毒を薬に変えてみせたい。毒を毒じゃないと思わせたい。

 

強欲も、矛盾も、後悔も、誰にでもあるもの。誰にでもあるのに、独り言でだって「ほんとうの気持ち」をぼやけない人達がいる。ひとえに「否定されたくないから」だとおもう。その先に、好かれたいがあるからだとおもう。

 

馬鹿らしい話だ。

 

嫌で嫌いでどうしようもないものもいざとなると上手くキライと言えやしない。立場とか、関係とか、気持ちとか。いろいろ。だから「ほんとじゃないこと」がでてくる。「ほんとじゃないこと」は「うそ」じゃない。でも、ほんとじゃない。たぶんそれがたまに毒になり、癌になる。

 

毒をのみたい。

 

たとえ目に見えてることが嘘だとしても

その瞬間は本当にしてくれてるのだから

その本当を喜ぼうと思う

 

そんな、夜迷事。

ごきげんようまたいつか。